珍獣ヒネモスの枝毛

全部嘘です

目の前のことでせいいっぱい

今日は夕飯の買い物以外ずっと家にいた。こんなに晴れていたのに、春になったら着ようと思っていた白いワンピースの出番なのに、出かけないと勿体ないという気持ちに急き立てられつつも、まず娘が友達と約束をしているし夫は仕事。とはいえ二人とも17時から18時には帰ってくるので、そう遠くへいくことも出来ない。しかも今日の花粉予報は尋常ではないpm2.5入りの花粉爆弾とのことである。これはもう、家で浴室のカビ取りをしたり普段より念入りにトイレや玄関を磨いてやりすごすことにした。

リビングを見渡すと娘が最近ハマっている手芸のリボンの糸くずやパール、グルーガンなどが散らばっていて、これも何とかせねばとため息が出る。そしてソファと、ダイニングテーブル。両方とも、夫が放置した空ペットボトルと加熱式たばこの吸い殻が転がっている。あの人はほとんどのごみをゴミ箱に捨ててくれない。トイレの床はいつも尿で汚される。何度も注意はしたが、こんなことで喧嘩もしたくないので、多くの場合は私がそれを綺麗にする。当然だと思う。夫の収入は私の何倍だろう。手取額は全サラリーマンの上位2.2パーセントの層に入る。私のスキルでは、何をどうやっても絶対に稼げない額。さらにこの数年で、うちのマンションの不動産価値が高騰した。我が家と同じ間取りの角部屋が購入時より三千万円も値上がりした。中古なのに倍近い。あまりの値段にママ友からLINEが来たほどだった。
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どうせ売れないだろうと思っていたら、先日その部屋に引っ越してきた新しい家族を見たのであんな強気な値段でも売れたらしい。こんな家にも、私だけの力では住むことが出来ないのだから。掃除しないと。綺麗にしておかないと。半ば強迫的にいつも私は掃除をしている。

ここに私達家族が引っ越してきたころ、娘が生まれたばかりで、家財道具などを満足に揃える時間的身体的余裕がなかった。そのため、しばらくリビングにはソファもダイニングテーブルもなかった。棚も一個しかないので床に色々なものが散乱するのも、授乳の時お尻が痛いのも辛かった。しばらくしてイスとテーブルが欲しいことを夫に伝えたが却下された。

一銭も稼ぎのない私に発言権は無いと、私も思っていた。

ちゃんと立派に毎日子供を育てていたのに、夫ではなく、私自身がその「子育て」という仕事を、誰より軽く見ていたのだった。夫に意地悪をされていたわけではない。

それでもやはり机といすが欲しいと諦めず訴えた私に、吐き捨てるように「勝手にすれば」と言われたことを、何故か今頃になって思い出してしまって、無性に腹が立って私が働くようになってから貯めた一万円札の束から何枚か使って贅沢なものを買ってやろうか、新幹線に飛び乗って東京にでも行ってしまおうか、とか思ったりもしたけれど、思うだけにした。

私がこれだけの貯金を増やせたのも、夫の収入がそもそも多いからこそなのだから。稼いだのは私だけど、夫が居なければ、無かったお金。山奥の古い一軒家ぐらいなら、一括でかえるほどの金額になった。それさえも、私が通わせてもらった私立女子校とFラン大学の学費総額にはまだ届かないので、親の凄さを思い知らされるのだが。

先程からあまりにもカネの話しかしていないけれど、私は夫を財布として見ているわけではなく当然心から愛している。当たり前だ、愛していない他人と、こんなに長い期間共同生活できるはずがない。結婚は、そして育児は、カネだけで解決できるほど甘いものではない。

春になると、毎年ミスチルを聴きたくなるのも、4月に告白してきた夫との思い出がたくさん詰まっているから。付き合う前も、この子(夫は同じ部活の後輩だった)は私のこと好きなんだろうな、と思っていた。私のこと好きなくせに、なんで他の人と付き合ってるんだろう、と思いながら私も他の人と付き合っていた。それとなく好意を歌詞に乗せて伝えられたことも何度もあった。甘い思い出はいくらでもある。ただ、生活は甘いだけでは成り立たないというだけで。

そういえば最近娘が、友達と自分の通っていた幼稚園に遊びに行ったという。来年度、職業体験でその幼稚園に行くことが決まったのもあるし、久しぶりに懐かしい先生に会いたくなったらしい。10年近く会っていなかった先生は、娘のことはすぐ判別できた。もう一人の友達は、顔がお姉さんになっていたのでわからなかったそうだ。話し方まで変わってないね、と言われた我が子は、本当に、いつまでも赤ちゃんみたいに幼く可愛い。

娘と先生(その先生は年長の担任だった)は、昔話に花を咲かせたのだが、そのなかで先生が「忘れられないのは、こはるちゃんのパパとママが、恋人同士みたいにめちゃくちゃ仲良かったこと(笑)」と言ったらしい。10年近くたっているのに、久しぶりに会った子供にわざわざ言うぐらい、そんなに私達夫婦は、仲睦まじいということだ。職業柄何組もの夫婦を見ているだろうに。娘の通っていた幼稚園は、日曜日に遠足があり、ママだけでなくパパも一緒に遠足についていくので、夫婦の姿を見られる機会が多いのだ。「ずーっと、二人で楽しそうに喋ってたよね」と先生は言ったそうだ。そうだな、多分私たち夫婦はとても仲が良い。特にあの先生が言ってた武田尾を歩いた遠足は楽しかった。


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今日はともかく時間があったので、ケーキでも焼こうかと思ったのだが、家の小麦粉が残り少ないのでその選択肢は消えた。駅前には阪急百貨店と、無駄に高いスーパーしかない。私は日常品のほとんどをなるべく職場の最寄りスーパーで揃えるようにしている。誇張抜きで、食材の値段が3倍ほど違うこともあるのだ。なので、小麦粉を地元で買うのは嫌だった。家でケーキを作るかわりに、阪急百貨店で御座候と、クッキーを買った。クッキーは特にブランドものというわけではなく、グリコのSUNAOというものだが、まあもともと若干グリコにしては高い商品なのだけど、それでも昨今の値上げラッシュでなんと1箱380円もした。高い、高すぎる。でも今日はそれぐらい贅沢しても良い気がした。御座候も数年前まではひとつ70円ぐらいだったのに今は税込み110円になった。

あとは阪急でミンチと豆腐を買った。今夜はハンバーグを作ろうと思って一度は牛ミンチをかごに入れたが、家に甜麺醤の買い置きがあったのを思い出したので、麻婆豆腐に献立を変更。牛を売場に戻して安い豚ミンチをかわりに入れた。しかし豆腐が一丁98円もした。職場の最寄りでは30円ほどで買えるのに。

 

それから、1時間49分40秒、友人と電話をした。とても楽しかった。主にイスラエルパレスチナ、あと差別、そして性加害について話した。友人は「自分が誰か他人にすること(主に性行為で女性に対してすることだけど、それ以外も)はすべて“加害”である、と認識している」と話していた。

自分がやることが基本的には全部加害だと認識して行動する。

それはとても、優しい人、相手を思いやる人の考え方だと思った。加害だと思うところからスタートしているからこそ、とにかく相手を傷付けないように気を付けているのだ。私の友人はそういう人なのである。彼は本当にいつも他人の気持ちを考えて行動している人だというのを、私は知っている。それを知らない人が聞いたら「全ての行動が加害」と聞くと、びっくりしてしまうかもしれないけれど。例えば今、本当に性加害で訴えられているような男性にはおよそ出来ないような崇高な考え方だろうと思うのだった。友人は「人が権力を持ったとき、いかにそれを行使しないか、ということが大切である」というような話をよくするのだった。例えば自分が他人を、女をどうにでも出来る力や環境を持った場合に、いかにその権力を使わないでいられるか。むしろ、その権力を使わないことこそが、真の自由なのだと思う、と彼は言った。

 

そして戦争の話。どうしても目に入ると暗澹たる気持ちになるし、イスラエルのやってることだけ見ると許せないし、子供が沢山死んでいるのは耐えられない、というのは当然として。この戦争だけをみたらその発端や、さらにその前のユダヤ人の歴史等、色々知ると更に何も言えなくなるし辛いね、という話をした。世界でああいうことが起きているのに、私ときたら…という思いも、常にあるのだった。あるにはあるけど、目の前の出来事でまた、すぐに打ち消されてしまう。本当に、最近色んなものが値上がりしすぎだろう。勘弁してほしい、ほらもう、戦争よりも食材や光熱費諸々の値上がりのことで、頭がいっぱいになってしまう。