先日、自宅から20分ほどの場所にある洋菓子店に、知る人ぞ知る「幻のクッキー」を買いに行って来た。
まあ、すぐ行ける場所やし、と思って油断していたのだが、前日に
「何時頃行ったら買えそうですかね?」
電話で問い合わせたところ
「みなさん開店3時間前から並んでいらっしゃいます」
と返され、のほほんとした調子で構えていた自分は腰を抜かしそうになったのだった。
それもこれも、他でもない母の日のためである。いや、自分の母親は和歌山の田舎者なので、何を贈っても素直に喜んでくれる。問題はお義母様だ。
海外にいくたびにブランド物を買ってくれて、私の知らないオシャレなよくわからない高級な物をいつも沢山プレゼントしてくれる、目の肥えたお義母様。
この日だけは、お義母さまに倍返ししなくてはいけないのだ。倍返しと言っても半沢的なあれではなく、また金銭的な倍返しも不可能なので、希少価値などに頼るしかない。とにかく毎年、母の日と誕生日は、この倍返しのために胃が痛くなるほど悩む。むしろほぼネタ切れ。
そして、今年選んだのがこのクッキーだった。ぜったいに、手に入れる。
その日は、娘の小学校の遠足、及び検尿があったので、朝から久々の弁当作り、そしてオシッコを引っ掛けられながらの採尿。
7時半、娘を見送る。それから洗い物などを済ませ、いざ、ミッシェル バッハへ。もちろんオシッコのついた手は、綺麗に洗っている。
久しぶりに阪急夙川駅前に行った。
9時頃に店に着いたので、時間的にどうかな?と思ったのだが、整理券を無事ゲット。
とりあえず、せっかくやから買わないと損?みたいな気持ちに駆られて5箱買ってしまった。
転売禁止ですってよ奥さん。
大変、美味しゅうございました。
多分プロブロガーとかの人は、 店名、買い方、値段、味レポなどを詳しく書くのだと思う。
実際恐ろしく入手困難であり、正直これを載せたら検索流入とかいうのが凄いと思う。
ぷろぶろがぁは、冒頭の写真を縦横間違えて載せたままにしないし、間違ってもタイトルに「寝とられ」とか書かないんだと思う。そもそも私は正格な商品名すら載せていない。
私はそういう、ブログで食べていける賢い人間ではないし、私の食い扶持は新規公開株の利益などで何とかなっている。どうしてもこのクッキーについてもっと知りたいなら、直接私に言ってもらえれば転売するよ。
嘘です。夙川のお店に並んで下さい。
さて、夙川といえば、阪急沿線の高級住宅地であり、谷崎潤一郎ゆかりの地でもある。
阪急の夙川の駅で下りて、山手の方へ、ガードをくゞつて真つ直ぐに五六丁も行くと、別荘街の家並が尽きて田圃道になり、向うに一とむらの松林のある丘が見えてくる。キリレンコの家は、その丘の麓に数軒のさゝやかな文化住宅が向ひ合つて並んでゐる中の、一番小さな、でも白壁の色の新しい、ちよつとお伽噺の挿絵じみた家であつた。
細雪より。
まさにクッキーやさんの近くだな、これは。
そんな谷崎潤一郎原作「鍵」を見た。出演は仲代達矢、京マチ子など。
セックスシーン、残虐な場面、一切なしにもかかわらず当時の映倫はこの映画を成人指定にした。
何度か映像化されているらしいが、1959年のこの作品は、女性の乳首どころか足首もそんなに出てこない。
しかし、描かれる性の世界は歪んでいて、変態的でインモラルそのもの。ストーリーはもちろん、役者達の演技もまた素晴らしい。
言外に匂わせる思惑、目線で語る下劣な欲望、嫉妬。繰り広げられる心理戦に、片時も目が離せなかった。
自分の妻を、娘の婚約者に抱かせようと策略を練る男。
その策略に気付きながら、知らんぷりし、利用する妖艶な妻。
財産目当てで旧家の娘と婚約した若者は、美しい義理の母を抱くのか?
母の美貌に勝てない、父親にも婚約者にも愛されない醜い娘の悲しみ、怒り、その矛先はどこへ向かう?
もう、ドキドキしっぱなし。そして、ラストのオチが最高。登場人物四人とも全員最低、五人目の女が握るのは、どんな「鍵」なのか。
谷崎といえば、これも良かった。こちらは百合で、ヌードシーンだらけ。樋口可南子さんの小さくて綺麗なおっぱいに釘付けになってしまった。
夙川、香櫨園、芦屋川、岡本、甲南、仁川、甲東園、宝塚……上げればきりがないほど阪神間は本当に上品で美しい街が多い。
今年で、結婚10年目であるが、私は、いつまでたっても、この街の住人になれる気がしない。
ずっとお客さん気分。観光客のように芦屋を語ることは出来るけれど、今住んでいる場所としてこの土地について何か言える言葉が見つからない。
ローゲンマイヤーのクロワッサンとミルクハースは、無添加で美味しいよ、ということぐらいしか、私にはわからない。