いいか、本当にこれから、本当のことをいうぞ?
俺は、偉い僧侶だ。世界遺産高野山の、めちゃくちゃ徳の高い偉い有り難い僧侶だ。念力で車だって止められる。だから俺の言うことは全部本当なんだ。
このまま生きていたら、いつか、皆死ぬ。
いや、本当なんだ。
わかってないだろ?あんた。
わかってないから、いつもそんなんなんだろ?
そんな所で靴を脱いで、線路に飛び込むのか?
そうだな。
死にたい死にたいって、俺も思ってるよ。思ってる。
でも、本当は死にたいんじゃなくて「こんなふうに生きたくない」だけなんだ。
ずっと昔から、ずっとずっと、皆に追い抜かれ、追い越され、どんどん遠ざかる連中の背中ばっかり見ていた。
そのうち追い抜かれるだけじゃなくて、すれ違いざまに足を引っ掛けられたり、そもそも能力がないから勝手に転んだりするようになった。
それで、ずっと地べたに這いつくばって血ヘド吐きながらガシガシ踏みつけられて、見ているのは、いつしか周りの連中の背中どころか、俺の汚いツラに降ってくる奴等の靴の裏ばっかりになった。
目に焼き付いてるのは汚れた靴裏の模様。背中を追いかけていた時はまだ恵まれていたんだと気づいたよ。
だからなんでそんな所で靴を脱ぐんだ?
なあ、耳鳴りがするんだよ。
その耳鳴りの音が、マクドナルドのポテトが揚がったときのあの音とリズムで再生されていて、煩いというより油っぽい感じのする耳鳴りで、脂肪の塊が耳んなかで暴れてるみたいで吐きそうなんだ。
うずまき菅がそもそもグロテスクなんだ。もう逃げたいんだ、嫌なんだ。嫌なんだ、こんな自分。こんなふうに、生きたくない、こんな世界に、生きたくなかった。
そんなことってあるか?って思うよな思ったよ俺も。でも本当にそうなんだ。
本当に、左だけ引き戸なんだ、周りは俺を騙そうってやつばかりだ。
油断していたらすぐに足許をすくわれる。
油断していたら、せっかく作ったチョコクロワッサンが捲れ上がって勃起してやがるんだ。ファッキンクロワッサン。
シフォンケーキをフワフワに作るためには、クソみたいに体力が要るんだ。メレンゲがめんどくせえんだ。
このまま生きていたら、いつか死ぬんだぜ。
◇ ◇ ◇
今日は、ある若者から「文章で勝つにはどうすべきか」みたいな、とても難しい相談を受けて、私も答えがあるんやら無いんやら、よくわからんくて、とりあえず何か貴方自身に付加価値つけなはれ、と言うた。
文章を書くって、一見ハードル低い。
音楽、絵画、漫画、いろんな自己表現・芸術があるなかで、一番簡単に見える。 だから皆飛び付く。私も飛び付いた。憧れていた新聞記者になれた。しんどくて辞めた。今は家族のためにパンやケーキを作って編み物をするのが私の幸せ。文章で勝つ方法、あるなら知りたいです。