珍獣ヒネモスの枝毛

全部嘘です

ヒーローになりたい


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ヒーローという存在について歌われた楽曲は時代や国境を問わず数多く存在するが、私はそのすべてを聴いたことがあるわけではないし、そもそも今回はヒーローについて書きたいわけではない。

ではヒーローの何を語りたいのかというと、私の好きな2組のアーティストがヒーローという同じテーマについて曲を作っていたので、それを比較して私の独断と偏見でどっちがどうだとか、やいやい勝手にしゃべりたいと思ったのだ。

そのアーティストとは、ミスチルと、amazarashiである。

私はこの両2組が、かなり好きだ。特にミスチルはファンクラブに入っており、20年も前から何度もライブにも足を運んでいる。40代ならば、ファンでなくとも誰もが一度はミスチルの曲を青春時代に経由しているはずだ(意図的にCDを買って聴かずとも耳にしているという意味で「経由」という表現にした)。

amazarashiはライブはまだ行ったことがないし、音源も実はサブスクでしか聴いたことが無いけれど、いつか絶対ライブも行きたいと思っているし、ここ数年はミスチルよりも聴く回数が増えた。

そんな私が、桜井さんのHEROと秋田ひろむさんのヒーローを聴き比べた時、amazarashiに共感する点が多いというか、「ああ、桜井さんは、人間ではなくなってしまったのだ」という思いを強くしてしまうのである。どういうことなのか。

 

ふたつの楽曲で歌われるシチュエーションは、少し似ている。

例えば誰か一人の命と引き換えに世界を救えるとして

僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男だ

これがミスチルである。桜井さんは言う、自分はその命と引き換えに、世界を救うことができたとしても、名乗り出ないだろうと。なぜなら臆病者だから。

愛すべき沢山の人たちが

僕を臆病者に変えてしまったんだ。

(中略)

でもヒーローになりたいただ一人君にとっての

つまずいたり転んだりするようならそっと手をさしのべるよ

とても素敵なラブソングだ。メロディラインも大好き。

 

人生をフルコースで深く味わうための

いくつものスパイスが誰もに用意されていて

時には苦かったり渋く思うこともあるだろう

そして最後のデザートを笑って食べる君の側に僕はいたい

ええわあ、ここの歌詞めっちゃ好き。

 

 

対して、amazarashi秋田さん

もしも明日世界の危機が来て

僕が世界を救う役目だったら

頑張れるのになかっこいいのにな

なんて空想だなんて空想だ

そしたら僕の亡骸君が抱いて泣きながら

やればできるんだねって呟いて

 

そう、ここまでは、同じ切り口のように見える。

登場人物が2人いて、おそらく男女だろうか、一人称の「僕」と、僕にとって大切な存在である「君」。

ただ、おなじような2人が同じ空想をしているように見えて、両者には決定的な違いがある。

それは、桜井さんが描く「僕」は自分の命と引き換えに世界を救えても、名乗り出ないのだ。だけど、たったひとり「君」のためなら、君だけのためのヒーローになりたい、と歌うのである。

対するamazarashi

なんて言っても世界の危機なんてそうそう来るもんじゃない

という。そして

絶体絶命の危機のふちで起死回生の一撃はきっと

怒りか悲しみだ

ときたもんだ。

更に

 

今が世界の危機かもね

誰も選んじゃくれないけど

頑張れるかもなかっこいいかもな

ここで今やれるなら今がまさにそうだ

 

どうせ世界世終われと願っても

世界はくそったれのまま続いてく

 

そうなのだ。この醜い世界はそう簡単には終わってくれない。続いていく。そこで君たちはどういきるか。

誰だってヒーローそんなわけはねえよ

いわゆる掃きだめのありふれた有象無象

 

ここである。誰だってヒーロー?そんなわけがない、つまり、自分の命と引き換えに世界を救う側にいけるのは、その権利を得られるのは、実はほんの一握りの人間なのだ。

そこを、桜井さんは、もうわからなくなっている。名乗り出ることで得られる地位や名声、そんな人生の「バズ」りに、桜井さんは興味がない。

なぜなら、若くして成功し、今もトップを走り続ける桜井さんは、もう人間じゃなくてとっくにヒーローになってしまっているのである。20代そこらで、ルサンチマンなどからとっくに解放され、それでも歌に対する情熱を絶やさず、高みを目指す姿はもう人間じゃなくて神様に近い。

余談だが私はB’zとミスチルの夢の競演が叶ったユナイトのライブを見に行ったことがある。その時の稲葉さんと桜井さんの対談などは、あまりにも歌に対してお二人がストイックすぎて、そして二人は人間のあらゆるしょうもない感情からはもう解脱しているように感じて、畏れを抱いたほどである。

ただ、そんな桜井さんなので、秋田さんの書くような、多くの人が感じる人間らしい葛藤や苦しみ、特に「負け」感情に関しての解像度が、低くなってしまっているのではと私は感じたのだ。

 

そこで負けねえと言ったもん勝ちの

よくある強がりのいつだってヒーロー

僕は選ばれたたった一人のヒーローじゃない。むしろもし選ばれるなら、こんな命くれてやるのに。でも、くそったれな世界は続く。それなら、そんな世界で僕はやれるだけのことやってやるよ、負けねえぞ。そんな感じ。うん、素敵。現代人に響くのは、やっぱりこっちかな。ああでもどっちも好きだ、ミスチルもamazarashiも、やっぱりセクシーなのもキュートなのもどっちも好きだ、なんで最後あやや