珍獣ヒネモスの枝毛

全部嘘です

スマホに見慣れない通知がありGoogleが『誕生日が待ち遠しいですね』などとほざいていた。何が待ち遠しいものか。もう1秒たりとも私は老いたくないし、さもなくば、今すぐ幕を閉じたいぐらいなのに。

でも誕生日ぐらいは、と、少し早いけれど自分用プレゼントにシングルモルトウイスキーが届いた。箱には青く深い海が描かれていた。小さなグラスに、ゆっくりと注ぐ琥珀色の液体。トプトプトプ、と、その音だけで気持ちが高まる。そしてこの香り。頭のなかが痺れる。

普段は油性ペンみたいな匂いの安い酒を飲んでいるので、たまにはこれぐらい贅沢してもいいだろう。わたしは今年もよくがんばった。もうええでしょ、と心の中のピエール瀧も言ってる。もうええでしょ、いろんなこと。もう何も望みたくない、足掻きたくない、諦めたい、囚われたくない。

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