ああちょいと、そこのきみ。
きみ、写真を撮るのは好きかね。そうか、好きか。どんな写真を?なるほど、心のままに風景を切り取る……よし、わかった。きみは大林宣彦監督の映画を見るべきだ。
普段写真を撮る人なら、大林作品を鑑賞すると、必ずその一場面ごとの美しさに心を奪われてしまうだろう。そして、こう強く思うはずだ。
「この世界に入り込んで、シャッターを切りたい…!」と。
16㎜カメラが記録する私小説「廃市」
まずはこちら「廃市」。古い歴史を持った小さな運河の町が舞台。
もうね、いきなり美麗、綺麗。いきなり写真とりたい。撮りまくりたい。
作品が始まって、のっけからそこに描かれる世界の美しさに、あほみたいにテレビ画面の写真を撮っていた。
表題の「バカ」とは、まぎれもない私のことである。だが一度この映画を見た人なら、観客は「バカ」になってしまうおそれがある。それほどこの作品は柳川の魅力を情緒たっぷりに、これでもかというほど映し出している。……魅力?ちょっと違うな、終わりゆく、ゆるやかに廃れ行く街の儚い輝き、というか。
私は最近兵庫県立美術館で小磯良平の絵画を見たのだが、その構図や光の加減がどこかこの映画に似ていると思った。流れる川の音、水の煌めき、夏の空気を感じてほしい一作。
1983年、大林のスタッフ全員が偶然二週間の夏休みが取れ、その期間を使い小さな16mmカメラを柳川に持ち込み、スタッフも小規模の編成で、 大林念願の福永作品を撮影した[1]。設定は架空の街であるが、撮影は福岡県柳川市で全編オールロケされている[2]。原作の持つ私小説的な雰囲気を出すために16mmカメラで撮影した。
制作経緯も、素敵だなあ、と思う。
続いてご紹介したいのは、こちら
これぞ “本物” のアイドル映画「HOUSE」
こちら「HOUSE」は、廃市とは打って変わったホラーコメディ。小磯良平感はゼロ。しかし、この作品もまた、アート。絵になるのだ。
まず女優陣が美しい。白髪の南田洋子。怪しげな洋館の主。
ヒロインは池上季実子。か、かわいい。めちゃくちゃかわいい。
そうそう、妖艶で可憐な鰐淵晴子さんも忘れてはならない。こちらのシーンは蜷川実花のフォトグラフのような極彩色のあでやかさである。
そして、なんといってもHouseで最もキュートなのはこの人神保美喜。
カンフーの使い手という謎設定により、常にホットパンツ姿で、ややムチッとしたおみ足を挙げながら、事あるごとに回し蹴りをかましまくる。
健康的な色気をふりまく愛すべきキャラクターで第二の主役といっても過言ではないのだが、ラストのこのシーンで、首がちょん切れて飛んでゆく。←は?
なんという滅茶苦茶な展開、そしてこの背景の顔びっしりイラスト、唐突に何?!なんなん、こわい。怖いけど何故かお洒落なのだ。
その他ピアノの蓋に挟まれた指が切断されたり、どこからか噴き出した血の海に流されたり、枚挙に暇がないほどグロいといえばそうなのだが、常にどこか笑えてしまう不思議な演出と、ポップでキュートな女の子たち。そうそう、大場久美子さんも出てた、もちろん可愛い。
いずれの女優さんも2017年現在、尚も美しさを湛え続ける美熟女女優である。
追記:この古い汚いカメラ、誰かいりませんか