
15時30分。 いつもより早い時間に仕事を終えていつもより早い時間に帰宅する と、いつもは日が射さない場所に冬の日差しが入り込んで、 いつもは暗い廊下の一角をキラキラと照らしていた。そうすると、 いつもはそんな場所で見つけられることのない埃が薄く溜まっているのが目に止まってしまい、 仕事から帰ってきたばかりなのに一度も腰を下ろすことなく一旦夕食の買い物を床に置くと、そのまま箒を手に持ち替え廊下を掃き掃除し、 せっかくなのでリビングも巡回しゴミを集めた。 我ながら働き者だなあ、と思った。
冬の太陽の位置は夏よりも低い。だから、室内に射す日光の角度も低くなり、夏よりも深く、 広く部屋に光が入り込む。
そしてこの時間、 冬の光はとても柔らかい。 夏は狂気で凶器でしかなかった太陽が、 こんなにも優しく部屋を照らす。「すごいも」を照らす。
先週は、 分厚くてフワフワのこたつ布団と毛足の長いラグを注文したので、週末届くのが楽しみ。冬支度は、毎年ワクワクする。夏支度、 という言葉はあまり聞かないのは、 ワクワク度の違いではなかろうか。
サブスクのプレイリストは真夏のピークが去って~からの槇原敬之やビング・クロスビーに変わった。
あと、冬は断然焼酎のお湯割りが美味しい。寒くなると毎晩飲む「すごいも」。すごいも、て名前よ。もうこのタイプの大容量焼酎は、かの有名な「がぶがぶ君」とか、そういう類いの、完全にバカの酒である。ハレではなくケもケの酒。嬉しそうに写真に撮ってアップするようなもんではない。
でもケがあってこそのハレである。そして私は気付けば毎日欠かさず飲酒する人間になってしまっていたが、日々飲んでいるのはSNSに投稿されることのない、キッチンの片隅で晩御飯を作りながら飲むしみったれたバカの酒なのである。SNS用に作られた酒クズキャラでもなく映えるヴーヴ・クリコでもなく、私は毎日粗悪な安物の甲類乙類混合酒をうまいうまいと喜んで飲むのである。そこに作為は全く無く、これこそ純粋に酒を愛でる女の在り方ではなかろうか。なかろうかて、知るかよ、適当ぬかすな。
夜になり、娘と駅前に出掛けたら、今年も大きなツリーが点灯されていた。娘が欲しかったエッセイと小説を買い、帰ってきてから2人で一緒にお風呂に入った。マライア・キャリーとワム!のクリスマスソングを娘と湯船で歌いながら、志望校の話をしたりした。
「学校へ通うのはあと97日。受験当日まではあと90日やねん」と、娘が言った。夜が更けていく。今年が暮れていく。
