珍獣ヒネモスの枝毛

全部嘘です

探し物は何ですか見つけにくい物ですか

昨日は祝日だけどいつもと同じ六時に目が覚めた。

 

起きてしまった瞬間、絶望が押し寄せてきた。なんだ夢かと。

夢の中では、私の母親は「手術がうまくいった」と言いながらスタスタと歩き、「とても元気になった、もう心配ない」と言って私が止めるのに家事をこなしていた。


その前々日父からかかってきた電話は暗かった。開口一番

「手術したからって、万々歳なんてことはないんや。五時間も、かかったけど、全部取りきられへんかった」
と言われた。目の前が、真っ暗になった。父は疲れきっていた。
今まで当たり前だと思っていたことが、もう当たり前じゃなくなるかもしれない、そんな思いが胸を去来して、やるせなくなった。

 

怖い夢を見たのなら、醒めた後の現実に救われるだろう。

私が見たのはとても幸せすぎる夢だった。

だからこそ、ベッドの中で目を開けてしまった時、さっきまで見ていた映像が余りに重く私の体にのしかかり、もう戻らないかもしれない日々を思って涙が止まらなくて起き上がれなかった。夢のせいであんなに泣いたのは初めてだった。

ずっと見ていたいと思うような幸せな夢は、どんな悪夢より残酷だと思った。