茹で上がるまで7分の歌

吐き出す前に、ぐっと飲み込まなくちゃと、胃のそこに溜め込んだドロドロの感情。

 

時々パスタの茹で汁が吹き零れるみたいにぶわっと急に溢れだすことがある。

 

僕ってさ、きみにとって何なの?

 

何度も飲み込んできた言葉。愚問。

こう問うと、貴女は、にべもなく『全部あなたが勝手にやってきたことじゃないの』とさえ言うかもしれない。

 

そうだね、実際僕が勝手に好きになって、きみからしたら、頼みもしないのに勝手に手助けしようとする、横からごちゃごちゃ、わけのわからないことを話しかけてくる変な奴、そんな感じだよね。

 

教室の片隅で静かにスティルネルを読むきみに、なんとか気付いて欲しくて、いつも横でわざとらしく大声を出したり、僕は必死だったけど、きみは長い間全然僕の存在を認識すらしていなかったね。

 

岩波文庫は、世界一美しい装丁だと僕が思うのは、きみが白く綺麗な手をいつもそれに添えている姿が浮かぶからなのかもしれない。

いつまでたってもこちらを一瞥もしない貴女。それで僕も覚悟を決めて、あの日かなり強引なやり方で、きみと友達になることに成功したんだよね。

 

ずっと僕ら友達だよって。

勝手にいなくならないでね、って。

何度もきみに念押しして、そのたびに、きみは優しく頷いてくれたじゃないか。

 

でも、ほんとはね、申し訳ないことに僕自身がその言葉を信じられていないんだよ。きみはきっと、いつかいなくなるでしょ。

 

『じゃあその時は、必ず一言お知らせするわね』なんて。やめてくれよ。

お知らせするなら、北朝鮮のミサイルの時みたいなのは、やめてくれないかな。四分前に言われても、僕はあたふたするだけで、何も準備出来ないよ。

せめて四十年前に、お知らせしてくれないか、そしたら、その間もっと色んな話で、僕は君を笑わせるよ。ペルーに住むフランス人の、あの話とかね。


「体調大丈夫ですか、心配です」

 

それだけを、メールした。

 

きみは、絶対に返事をくれる。毎日。

それが、そのことがどれだけ大きな僕の希望になっているか。

 

きみは色んなことに絶望しているけど、誰かを恨んだり呪ったりは絶対にしない。

悪あがきしたくないんだよね、きっと。

きみが抱えるいくつかの大きな問題は、多分抜け道はあるんだ、但しそれはきみにとっては無様でしんどいことなんだと思う。

 

でもね、さいごの悪あがきを、僕としてくれないか。

思い切り格好悪く、僕と生きてくれないか。

 

それが無理なら、先に僕を、殺してくれないだろうか。

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はい、茹で上がりましたー