cj3029412さんから、ひどい本が送られてきた

この本をね、dk4130523 (id:cj3029412)さんに送って頂いたのです。


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それで昨晩読んでみたらもう、身体中カーッと燃え上がり、熱くなって、毛穴という毛穴が開きまくりの、交感神経が完全に興奮状態に。眠れなくて。

 

は、ら、た、つー!!

腹立つなあ、腹立つ、腹立つ、檀一雄、最低やんかー!って。

 

この本、沢木耕太郎「檀」は、小説家檀一雄の妻視点で書かれたノンフィクションである。

 

四人称、2.5人称目線と言われる独特の手法で書き出される妻(と子供)、夫、愛人の日々。そこへ檀一雄の代表作「火宅の人」の世界が重なり、読者はただただ、引き込まれる。檀一雄のクズっぷりに。

 

ごめんなさい。

クズだなんて表現は、もっての外ですよね、大作家先生ですもの。

 

ただ、この檀の妻、ヨソ子さんの証言だけで言えば、ざっと檀一雄とはどういう夫であったかを箇条書きしたら

 

  • 次男日本脳炎で重い脳障害を負ったのは、嫁のお前のせいだ、お前が悪い、と、姑と二人で妻を責める(もちろんそんなはずないけれど、黙って耐える妻。この時代ってこれが当たり前なんやな)
  • 日本脳炎の高熱で次男が苦しみ生死をさまよう中、愛人と旅行
  • それから家を出て愛人とホテル暮らしを始める
  • たまに帰ってきても、愛人との情事の痕跡だらけ
  • そんな愛人を2度も堕胎させる
  • 愛人に殴る蹴るの暴行
  • 人のことは平気で傷つけるくせに、檀一雄の被害者意識は凄くて、愛人との初夜のとき、彼女が処女じゃなかったことを後々までずっとウジウジ悩み、挙げ句それを妻に相談する。「ひーちゃん(愛人)の初めての相手って右翼かな?外人かな?」そんな夫を可哀想に思って、なぐさめる本妻。知らんがなっ!愛人が非処女やったて、知らんがなーーっっ!

 

はあ、はあ。ぜえ、ぜえ。

腹立ちすぎて、こっちの筆もこころも乱れるわっっ。

 

ただ、こんなふうに箇条書きにしたものだけを見れば、それはたいそうクズに見えるだろう。

 

しかし、これは、物事の一面でしかないことも、事実なのである。

 

私達は、もうひとつの、揺るぎない事実も、目にすることが出来る。

それは、檀一雄の子供達は、皆父親を尊敬し、誇りに思い愛していること。良い父であったと、娘であり女優の檀ふみさんも何度も語っていること。何より誰よりも、妻のヨソ子さんが、そんな夫を愛し続けていたという“事実”である。

 

子供達の、親へ対する評価、そこには、上記した、いささか私の悪意を含む檀一雄に関する箇条書きには無い人柄が、読み取れる気がするのだ。

 

そして、もうひとつ頂いた本。


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恥ずかしながら、代表作「火宅の人」も未読であり、私が檀一雄を読むのは、これが初めてである。

そして、読了後、なぜ檀一雄がこれほどモテたのか、よくわかったのだった。

悔しいけれど、わかってしまったのだった。

 

類い希な文才がある。ユーモアのセンスもありクスっと笑わせられる、そしてどこか寂しげで子供じみていて、可愛らしさがある。しかも、料理が、めっぽう上手い。

……モテるよね。

モテるわ、そりゃ。あくまで私に関して言えば、頭が良くて、面白くて、可愛いげのある男性なんて、そこだけ見れば好みのタイプすぎて、好きにならない自信がない。

 

しかし、心がヒリヒリする本であった。

呼吸と脈が上がった。エアコンの温度を下げた。そして、今私は「火宅の人」を読もうかどうか、迷っている。

 

いや、読みたいのだ。しかしそこには、愛人と初めて結ばれ思いを遂げた(檀一雄曰く“事”が起きた日のこと)描写から、事細かに書かれている。それに比べ、妻のキスの仕方から愛撫の受け方がどんなにダメかという、いらん情報まで。 

うー、ひどい、辛い、きつい。こんなものを読まされたら、妻はどうしたら良いのですか。またも擬似的に嫉妬の炎に身悶え、苦しむ夜になりそうで。

 

実はid:cj3029412さんに本を送って頂くのはこれが初めてではない。前回は、村上春樹のこちらをプレゼントして下さった。


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その前は、村上春樹の「国境の南、太陽の西」を教えてもらって、それは図書館で借りて読んだ。

ちなみにこの国境の南~は、不倫を題材にしており、村上春樹なので覚悟はしていたものの、大変刺激的な性描写であった。

そしてやはり不倫ものなので、なんか、妻としてはこれも腹立つから、また眠れなくて大変な一冊ではあった。しかしそこは村上春樹、性的でありながら文章が美しく、幻想的な描写(特に小学生の頃ヒロインが子供ながらに主人公の男性と肉体関係を持ちたいと思っていた云々のくだり)が、私は好き。

 

このように本を送って下さるのは、ひとえに、小説を書く私へ「もっと勉強せえよ!」と、叱咤激励して下さっているということなのだと受け止めており、実際かなり勉強になっている。

 

実は今私は、偶然にも、二人の女が一人の男を巡ってバチバチやる話を書いているのだ。

この、読了後の焼けるような心のヒリつきをそのまま自分の文章にも生かせたら、と思った。

 

そんなid:cj3029412さんの書くノンフィクションがこちら

https://camp-fire.jp/projects/view/29852

 

ここに、わずかばかり協力させて頂いたご縁で、今まで色々な本を頂いた。

 

白血病の少年と、研修医のお話。

私の、普段簡単に口にする「死にたい」なんてそんな言葉の、なんと、軽いことよ、と、思わされる。だからといって、健康なんやから無条件で幸せなんやで、的なそういう説教じみた主旨ではない文章。けれど自分がなんだか恥ずかしくなってしまった。「死にたい」に薄いも厚いもないかもしれないし他人から見たら薄っぺらい死にたいも、本人には本気の死にたいなのかもしらんけど、こういう病気があることを改めて知ると、やはり、自分の生を大切にしようと思わずにいられない。15年をかけて綿密に取材された構成にも、ただただ尊敬するばかりである。

ブログは、こちら。

http://dk4130523.hatenablog.com/

古典文学にも大変詳しく書かれたブログが多く、万葉集好きな私は、そちらも楽しみに拝読させて頂いております。

 

そして先日は、達筆な文字でしたためられた素敵な残暑お見舞いがポストに。
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近頃は、親しい人とも年賀状さえやりとりすることが少ないので、とても新鮮で嬉しかった。(せっかくの美文字、心をこめて書いて下さったのを消すのは失礼とは存じますが、上の句は、ちょっと思うところがあり、ふせました。)

 

ほんとうに、ひどい本を送って下さったものだ。

私はまだまだ、人の心をヒリつかせる文章が書けていないと、思い知らされた。

今日から新学期。頑張って、小説書くぞ!