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夢のマイホーム 〜ミサワホームO-Ⅱ型〜

ここ最近、実家に帰るたびに、庭の花や木が減っていくのを感じる。
一昨年咲いた木蓮も、去年の春は見られなかった。20年以上植えられていたアラスカ杉や、バラのアーチはいつの間にか無くなっていた。
母が料理のスパイスによく使っていたガレージ横の月桂樹も葉が変色してきている。
毎年セミが脱け殻をつけるキンモクセイロウバイの木は、かろうじて健在であるが。

この家全体が、そこに住む人間の老いを視覚化している。
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私は、うちの家、この実家のデザインが好きだ。

ミサワホームのO-Ⅱ型。おそらく、日本で一番売れた住宅である。

 
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ミサワホーム公式ホームページから写真を拝借した。これがO-Ⅱ型(※厳密にはこの写真はO型。外灯の丸いライトが型番を表す)という住宅で、五万戸の販売実績があるという。日本全国色んな場所で、今もこの型の住宅を見ることができる。それほど、売れた家なのだった。

 

父は旧帝大を出て銀行に就職し、すぐにこの家を買った。1980年のことで、なんと当時の住宅ローン金利は7.15ほどであったというから、恐ろしい。その分貯金の利子も多かった時代ではあるが、それにしても今のフラット35のような10年税金優遇なども無い時代、当時のサラリーマンの抱えたローンの重さに震えそうになる。

 

ミサワホームO-Ⅱ型は、建物内だけで床面積が43坪もある広めの間取りだ。

一部屋一部屋が大きく、2階に4部屋(うち3つが8畳、1つは6畳)、1階にはリビングと和室がある。そこへ、車2台分の駐車スペースと小さな庭のある家が私の実家だった。

決してお金持ちの豪邸ではない。80年代の堅実なサラリーマンが、こつこつ働いて、建てられる家。手の届く夢。でも、本当に夢があるというか、なんだかワクワクする造りの家で、たとえば3階ロフト部分へのぼる木製の梯子だったり、吹き抜けの階段など、子供のころの私には、それらは、ごっこ遊びの最高の舞台となった。

そして、玄関を開けて真正面に見える大きな柱。この柱の頂部は3階ロフトにまで繋がっていて、まさに「一家の大黒柱」という佇まいだったのだ。 

しかし、この大黒柱、実は中は空洞で、単なる飾りというか、心の拠り所としてデザインされたものだそうで、実際は家屋を物理的に支えているわけではなかったのだ。それを知って少しショックだったが、精神的な意味の大黒柱がある家、というのも、なかなか素敵だな、と今は思うのだった。

 

少し前、父が急に入院することになった。心臓が炎症を起こし、そこに水が溜まったとかで、心膜炎というらしい。

突然その知らせを聞いたとき、色んな思いが頭をよぎった。

 

私は、父が嫌いである。

はよ、死ね、と、何度思ったかわからない。

 

それは父の子育て、特に私に対する勉強面での過剰な叱責により、人格を否定され続けた結果当然の心理であると言える。

阪大出身の父は、私にも同じ勉学の才を期待し、それを私は答案用紙で裏切り続けた。テストで悪い点を取るたびに露骨に失望を露にし、大きな声で私を怒鳴りつけた。

親の期待にそえなかったという経験の積み重ねが、どんどん私自身の自己肯定感を奪っていった。

結果、こうして何事にも消極的で、自分に自信のない私がいるわけだ。

自分に子供ができて、尚更父が昔私にとった行動を許せなくなった。どうして、こんな大切な存在に対して、そんな酷い言葉を投げつけられたのか?その想いをいっそう強くした。

 

私は、父とは違う方法で、真逆の方法で子育てをする。この子の努力を、絶対に否定したりしない。そうして、この子を一人前に育て上げるんだ、見てろよクソ親父。

父は本当に勝手な人間で、自分がどれだけ私に酷い事を言ってきたか全く忘れた様子で、結婚して和歌山を離れた私にしょうもないことで電話やメールをよこす。

私は、父からの電話にはあまり出ないことにしていた。メールも、ほとんど返していない。

 

『庭の月下美人が咲きました。とても綺麗です』

こんなメールが来たこともある。白く美しい花の画像が添付されていた。

無視した。何年に一度しか咲かない?知ったことか。

秋ごろ何度も何度も電話が来るので何事かと思って出てみたら『伊勢海老が串本で美味しい季節になったら、皆で行こら』とのことであった。

うちの娘はエビが嫌いだ。どうして父の感覚はこうもズレているのか。

そう思っていた矢先のこと。

久しぶりに電話をした声は、弱々しくて、聞き取れないほどだった。

 

今まで聞いた事のないような、振り絞るような、か細い声。

もう、私を怒鳴りつけたあの声ではなかった。

あれだけ人を傷つけておいて。そのことの重みもわからないまま、また、勝手に、今度は死のうとするのか。このまま居なくなるのか。どこまで勝手なんだ、この人は。本当に、勝手すぎる。
腹立たしく、そして、涙が、止まらなかった。

 
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その後、早い段階で入院出来たこともあり、幸い父は回復した。
いまはまた、相変わらず勝手でうるさい。

伊勢海老の季節は過ぎようとしている。月下美人の鉢植えは、この家から消えた。そしていずれ、父もいなくなる日が来る。そんな日なんて来ないと思っていたけど、そうじゃなかったことに気付いてしまった。

だから、もうあと何回帰るかわからないけど、この家と、父と過ごす時間、もう少しだけ大切にしてみてもいいかな、と、最近は、思う。

 

あと、マンションに住んでみて、今は戸建てよりマンションが断然良いと思っている。花の世話も玄関の掃除もセールスマンを追い払うのも全部管理会社がやってくれるのだ。

確かにマンションは管理費の積み立てという問題もあるが、実家は築36年のうち、今まで三度の外壁、屋根工事と一度大きなリフォームをして合計一千万程の支出があったので、出ていくお金だけ見ればトントン。むしろ地価の高い都市部駅前マンションのほうが30年後の資産価値はずっと高い。まあ、阪神地域のマンションと大阪まで一時間以上かかる田舎の戸建てなんて、比べても意味はないのだけど。

 

ミサワホームのO型など一見してわかりにくい型番の違いは、外灯で表されていて、それも面白いなと思う。実家はO−Ⅱ型だから、アルファベットのOを表す丸いライトの上に、二羽の鳩が乗っている。Ⅱ型だから二羽の鳩。このシリーズで、Aの形の外灯もあるし、鳩の数が違うバージョンもある。本来の外灯の役割プラス、斬新な用途を発想をしたなと感心する。

あと最近ミサワホームで面白いと思ったのはこのミッフィーちゃんの使い方。

 

 https://togetter.com/li/1069706

内装見本じゃ無いだろうよこんなに真っ黒なのに、とは思ったけど(どなたかがツッコんでましたが)まあ、こう言う話題になるような遊び心のある素材見本はいいセンスだなあって思う。