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ママ友×タワーマンション=イジメ、みたいな構図について。

 

砂の塔【初回限定盤】

砂の塔【初回限定盤】

 

 

私はそのとき、尋常ではない緊張感のなか、手縫い針に糸を通していた。

上質な絹の反物に針を入れると「プツっ」という独特の感触がする。針先が布目をとらえるごとに、冷や汗が流れる。

とても滑らかでやわらかな、それでいて、ひと針進むごとにしっかりとした質感を伴う布。

代々ご実家に伝わるという高価なお着物の裾あげを、ママ友に頼まれてしまった。最初はもちろん断った。

なんでも、急遽週末に着物を着なければいけない集まりに出席することになったが、丈が長すぎる。祖母から受け継いだ大切な着物なのでそれをぜひ着たい、でも、阪急百貨店の着物売場で頼むと、早くても来週中頃の仕上がりになるという。他の呉服店もあたってみたが、やはり日程的に無理がある。

ミキちゃん(私)は、何でも器用に作るから、着物も上手に縫えるやんね!?

いきさつは、そんなかんじだった。手土産にアンリシャルパンティエのケーキをホールで持ってきてくれた。お礼はまた後日、別途頂いてしまった。慣れない和裁はあれで良かったのかどうなのか、向こうの本心はよくわからない。

 

そんな私は、ドラマ「砂の塔」を、ツッコミ入れながら見ている。

またですか。また、こういうママヒエラルキーものですか、はいはい、と。

確かにママ友付き合いは、決して楽しいばかりのものではない。

それはそうだけど、ママカーストがあるとして、カースト上位のママが、下位の貧乏人をわざわざ同じコミュニティに引き入れてまでして苛めるような真似は、絶対、しない。

だいたい、なんで主人公菅野美穂は、自分の娘の通う幼稚園と違う幼稚園のママ達と、あんなにずっと一緒につるんでるんだ。バス停違うわよって言われてたやん、普通ならそれで終わるやん。

私自身、高級住宅街といわれる阪神間のとある地域に住んでいて、周りはお金持ちのママが多い。例えばその人の旦那様は外資系金融マンだったり、弁護士さんやコンサル、パイロット等々であるのだが、そういう、所謂デキル男の人が、わざわざ人生の伴侶として、イジメのボスをするような人間性の女を選ぶはずがないのだ。

そういう男性の妻になる女性は、あくまでも私のまわりのサンプルだけの話だが、もれなく美人であると同時に、性格は文句のつけようが無い。そしてもうひとつ加えるなら、実家も良い。つまり天が二物も三物も与えた選ばれしスーパーウーマン達なのである。ただ、学歴に関しては、あまり関係ないかもしれない。中途半端に旧帝大を出てしまって、誰も聞いてもいないのに出身大学の話をしだすママなんかは、その場では誰も嫌な顔はしないが、次第に距離を置かれたりする。

そう、良い大人なんだから、このドラマみたいに露骨にイジメなんかしないのである。

まして、育ちの良いお嬢様で、生まれつきの美人、受験戦争に揉まれ自尊心を傷つけられることもない。

つまりそれまで歩んだ人生で、性格がひねくれてしまう要因がないのだ。

したがって、タワーマンション最上階に住むセレブママが低層階ママを苛めることは、まず、ない。

 

そして、お金持ちの人達は、そういう人達だけの集まりを作る。下手に庶民に近づくと、そのつもりがなくてもイヤミになってしまったり、向こうも向こうでとても気を遣っているのがわかる。

例えば、彼女達はひとつの百貨店で年間300万円以上買い物する人しか持てない外商カードを持っている。大阪のど真ん中のパーキングにいつ駐車しても無料になるカードを持っている。

彼女達の家に行くと、まずバイタミックスという10万円ほどのジューサーで作ったスムージーをウェルカムドリンクとして振る舞ってくれる。林真理子秋元康も同じものを持っているらしい。私が飲んだのは、小松菜のスムージーだった。セレブは小松菜をジューサーで潰したがる。私は、おひたしのほうが圧倒的に好きだ。

彼女達は言葉で自慢などしないけれど、常に高級な物を、しかもいつも違う種類の物を何個も持っており、私が後生大事に使うようなヴィトンは持たず、桁ひとつ違うエルメスを好む。ヴィトンをばかにはしないけれど、あの人達はそれを持たないのだ。そうなるともう、私がOL時代に頑張って自分で買った鞄達のどれもがみすぼらしく情けなく見えてくる。

 ただ、ママ友いじめや、ヒエラルキー間のいじめなどがあるとすれば、それは中層の中だけで小さな差違を見つけて優劣をつけて満足する女性にありがちだなのだとは思うことがある。

私の友人はそういう中階層のややこしい性格のママをエセセレブと呼んでおり、つまり一見セレブを装っているが、実はお金持ちではないということで、ゴヤールバッグのパチモン所有率が非常に高い。一番の特徴は、性格が悪いことと、夫の悪口を言う、夫を見下している、夫に感謝していない、これだと思う。

 

それでまあ、セレブでもエセセレブでもなんでもない私がタワーマンション最上階の人と仲良くなったのは、私が編み物とハンドメイドが得意で、それを教えたりしたのがきっかけであり、あくまで先生と生徒なのでそれほど近くもなく適度にお付き合いをしている。もちろんドラマみたいなイジメはない。

砂の塔のママ友関係は、リアリティが無い、よってイジメにもリアリティがない。

所詮はドラマの話だが、人間関係で魅せるストーリーなら、そこはリアルであってほしい。

例えば、ドラマ「名前の無い女神達(フジテレビ系で多分2011年。調べるのめんどくせ。)」、あのドラマは心理描写がとても良かった。

ばりばり働くママのりょうが、仲良しだったママ友杏をいじめるようになった心理も、とても丁寧で自然なものに描かれており、複雑な女の友情に涙が出た。

また「マザーゲーム(TBS系2015年かな?)」でも、ヒエラルキー最上位の壇れいはイジメを首謀しないのは、筋書きとして良くできていた。その他の設定めちゃくちゃだったけど。

 あとは、タワーマンションでのママ友話といえば、この小説。私の大好きな桐野夏生先生。

 

ハピネス (光文社文庫)

ハピネス (光文社文庫)

 

 なんだけど、桐野せんせ大好きなんだけど、この小説は、あんまり共感できなかった。まず、主人公達の交遊関係の狭さ。ママ友は、めちゃくちゃ広い、そして浅い。あとは、ママ友が不倫していると知ってからの、心理、ここらへんが一番納得できていない。長々と感想を書いたブログの下書きを間違えて消したので、書く気が失せたけれど、多分桐野夏生がもう今は成功者で、小さなコミュニティのママ友界隈での心情の変化なんか忘れてしまったからだと思った。

母親、母性について書かれた小説で一番好きなのは

 

母性 (新潮文庫)

母性 (新潮文庫)

 

ある意味本当に残酷で、読んでいて辛かった。これについては、また別に感想をじっくりと書きたい。母性とは、自然に本能に組み込まれているものなのか?そこをぐりぐり突いてくる。そして、最近になって、私はその答えを自分なりに見つけた。後日ブログに書きたい。

あとは、これ

 

 

マザーズ (新潮文庫)

マザーズ (新潮文庫)

 

 リアルでセレブな小説家ママの、別世界な子育てを随所に垣間見る。しかも、金原ひとみ自身はそこを普通だと思っていそう。終盤、個人的にうちの子にそっくりだと、感情移入して読んでいた女児のまさかの展開に、ショックで号泣してしまいました、私。

 

と、これを書いていたら、チャイムが鳴った。同じマンションのママ友が、今夜のおかず作りすぎたから、と言って、揚げたての大学芋を持ってきてくれたのだった。私ら昭和の団地のオバチャンみたいやねー、今度醤油借りに行くわ、なんて言いながら笑いあった。 

子育ては、辛い、わからない、思い通りにいかない、今まで積み上げた自分の常識を覆され、努力を潰され、世間様に謝り倒し、そんな理不尽の連続。

その同じしんどさを、おそらく夫以上にわかりあえるのが、ママ友達である。普通に考えたら、助け合わないでどうする、って感じなのである。醤油だって、貸し借りすればいい。

ああでも、お着物の裾あげは、もう勘弁だ。