もう、もうお腹いっぱいです、うえっぷ。
お姫様抱っこ、マノロブラニクの靴、突然のキス、恋より仕事に生きたい勝ち気な主人公(これが一番、古くさいかも)……時代錯誤すぎるその設定と展開は、あえてのことなのだろう。
娘のおもちゃ箱に並べられた、イミテーションの宝石のように、わかりやすい輝きがちりばめられていて、わざとらしくて、安っぽくて。うん、好きだわこれ。
怖いもの見たさでフォローしているツイッターのキラキラ女子達(慶應幼稚舎組。交友関係は就職してからも全て幼稚舎からの人間関係で固められている)アカウントを、煮詰めて、そのエキスを抽出したものに、バブル期の浅野ゆう子やら吉田栄作なんかをトッピングした感じの、濃いような、だけど薄っすーいような、そんなドラマだった。
「せいせいするほど愛してる」(TBS火曜10時)。そもそもこのタイトルがもう、浅野温子が髪をかきあげて出てくる率高めのワードチョイス。金利が7パーセントぐらいあった頃の日本を思わせる。
舞台はティファニー。滝沢秀明演じる副社長と武井咲演じる広報の恋、しかも不倫。
実在する会社を扱ったドラマでこの設定、かなり責めている。主人公のライバルも有名ブランドのジミーチュウ広報。
ベタに主人公のヒールが折れて、応急処置で副社長に買ってもらう靴はマノロ。すべて現実に存在するブランドと商品が登場する。
現実に実在しないのは、部下の靴のヒールが折れたときに、ひょいとお姫様抱っこをして16万円の靴を買う上司のほうだ。
何より私がバブルっぽいというか、昭和のにおいにやられたー、となったのは、キラキラ女子三人が小洒落たマンションに共同生活をしているということである。
三人の職業は、ティファニー広報、大手出版社編集、有名モデル。
このうち一人だけでも十分凄いよ、すごいドラマになるよ、貧困女子が溢れかえるこの時代に、ここまで上りつめるだけでドラマになるのに、そこはあっさりスルー。これが幼稚舎のパワーか※慶應の設定はドラマにはありません。
この肩書きの若くて可愛らしい20代女子が集まってワーキャー言いながら共同生活しているシーンは、現実離れを通り越して、桃源郷のような夢の世界。ディズニーランドかここは、というぐらいの輝かしい空間なのである。
あの三人のシーンを見ていると、どうしても昭和の迷作OL三人旅シリーズを思い出して、日頃チャンネルNECOでそんなんばっかり見ている私はもう、武井咲が萬田久子にしか見えなくなってくるのだった。
また、芸人の横澤夏子が会社の先輩役で出ており、彼女お得意のいかにもな、わざとらしいOLを演じているので、ここまでやるとティファニーどうなんだろう、って心配にすらなる。まあでも、なぜか旬をちょっとすぎたGENKINGとかも脇役で出でおり、とりあえず詰め込んだんだなあ、というのがわかる。
主人公と同居する編集の女の子は、新進気鋭の若手売れっ子小説家のイケメンになぜかあっさり惚れられてるし、こいつらの人生、チョロすぎやなあ、ほんま私あと何回生まれ変わったらティファニー広報とか大手出版社で働いてまともな給料もらえるんかなあ、とか、思わない、思わない。
こんな時代だし、これぐらいわかりやすいイミテイションでゴテゴテ飾り付けたドラマも楽しいだろう。
私は、昔から偽物の指輪が好きなのだ。
地方のお土産屋さんなんかの軒先に陳列された、プラスチックの宝石達。あれが、大人になった今も好きなのだ。偽物でも、すぐに壊れても、心惹かれる。私の左手の薬指には、ティファニーの本物のマリッジリングが光っているというのに。
ドラマでは、タッキーがこれと同じ指輪をしていて、そして彼はこの指輪に誓った愛に背いてしまう。企業コラボの物語としては、なんちゅう展開や、と思うし、この点だけはリアルに面白いかもしれない。あとは設定こそチープだが、出てくる宝石と高価な靴達は本物に間違いなく、どれも私には縁遠いその美しさは目の保養になる。
とりあえずお腹いっぱいなのと、色々まぶしかったり、なんか悶絶するので、女友達とボロカスにこきおろしながらビール片手に見るのが120%楽しめるかなと、そんなドラマだった。